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「あの…離してください」
「嫌だ。どうして逃げようとしたの?」
「それは……あなたが僕たちの事を誰かに話したかもって思ったら怖くなって、それで『言わないよ』」
僕の言葉を遮るように、柿崎さんが言った。
「言わないよ。分かるよ、君の気持ち。
俺さ、中学のときに男と付き合ってたんだ。
好きだった。
でも、周りにバレて別れたんだ」
僕と目が合うと、柿崎さんは優しく笑った。
「それから結構苦労したよ。高校も大学も地元から離れた所にしたしね。
だから、言わないよ。
あの時いたもう一人の奴は、気づいてなかったし」
明らかにほっとした僕を見て、柿崎さんは辛そうに言った。
「蓮見が羨ましいよ。こんなに、心配してくれる恋人がいて。
俺は彼女に愛されてなかったのかな」
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