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先輩は、僕をテニスサークルの部室に連れてきた。
誰もいない部室に入ると、先輩は「良かった」って言って椅子に座った。
「先輩?」
「最初から、ずっと見てたんだ。
教室に向かって歩いていたら、夏樹を見かけたんだ。 声をかけようとしたけど、柿崎が先に話しかけてしまった」
え、じゃあ、会話を全部聞かれちゃったの?
「キスとか…聞いちゃいましたか?」
先輩はちょっとムッとして、僕を見つめた。
「夏樹さ、ちょっとだけ『キスしてもいいかな』って思っただろ!」
「思ってないです」
先輩はじっと視線を外さず、確信してるように続けた。
「最初は警戒していたのに、あいつの過去の話を聞いた途端夏樹の目が優しいものに変わったんだ。
辛そうなあいつを何とかしてやりたいって。
俺が声をかけなかったら、そうなっていたかもしれない。
『キスしてみんなが救われるなら』って、お前なら思うだろ?」
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