卒業

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「ごめん、気づかなかった」 「仕方ないな。急いで帰ろう。 それは?」 櫂が先輩から借りたコートを指差した。 「あ、これは……」 先輩をちらりと見る。 僕の視線を追った櫂は、僕からコートを脱がすと先輩に返した。 そして、自分のコートを僕にかけてくれる。 櫂の香りがして、なんだか櫂に抱き締められているようでドキドキしてきた。 「ありがとうございました。夏樹は大丈夫ですから。 では、失礼します」 櫂は先輩に挨拶すると、僕の手を握った。 「どういたしまして。 じゃあ夏樹、また連絡するから」 「はい」 櫂に手を繋がれている事で頭が一杯で、先輩には返事を返すだけで精一杯だったんだ。
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