1644人が本棚に入れています
本棚に追加
「ごめん、気づかなかった」
「仕方ないな。急いで帰ろう。
それは?」
櫂が先輩から借りたコートを指差した。
「あ、これは……」
先輩をちらりと見る。
僕の視線を追った櫂は、僕からコートを脱がすと先輩に返した。
そして、自分のコートを僕にかけてくれる。
櫂の香りがして、なんだか櫂に抱き締められているようでドキドキしてきた。
「ありがとうございました。夏樹は大丈夫ですから。
では、失礼します」
櫂は先輩に挨拶すると、僕の手を握った。
「どういたしまして。
じゃあ夏樹、また連絡するから」
「はい」
櫂に手を繋がれている事で頭が一杯で、先輩には返事を返すだけで精一杯だったんだ。
最初のコメントを投稿しよう!