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身体中を確かめるようにペタペタと触っていると、「もういいから」と櫂が困ったように言った。
ああ……くすぐったかったのかな。
でも、怪我はしていないようで良かった。
「どこかで話せる?」
「海に行ってみようか?」
僕たちは琢磨のおじいちゃんの家に戻った。庭から海に下りる階段は、月明かりのみなのでちょっと怖い。転ばないように少しずつ進んで、下りきった時には安堵のため息が漏れた。
僕たちはパラソルの下に並んで座って海を眺めた。
昼間と違う海は、近づくと足を取られそうで恐怖さえ感じる。
「櫂はここで合宿してるの?」
「うん。急に場所が変更になったから、夏樹に言ってなかったよな」
「いいよ。僕もここに来るの急に決まったし。
それにしても、こんな偶然あるんだね」
「運命かな」
櫂の言い方が可笑しくて、思わず笑ってしまう。
そうだ。話を聞かないと。
櫂がサッカー部に一人で戻りにくいなら、僕が一緒に謝まって許してもらわないと。
「櫂、何があったの?また、喧嘩したの?
ちゃんと聞くから言って」
「え、喧嘩?俺、誰とも喧嘩してないよ。
あ、だからさっき確かめるように触ってたのか。
俺はてっきり、会えなくて寂しかったからだと思ってた」
「っバカ。そんなわけないだろ」
喧嘩した訳じゃないの?
あれ、じゃあ何で櫂は合宿中なのに僕に会いにきたんだろう。
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