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「え、櫂、何するの?」
「あの階段の上までは、夏樹と二人きりでいたいんだ。ダメ?」
そっか、そうだね。
「ううん。階段の上までは二人きりでいよう」
櫂に立ち上がらせてもらい、手を繋いだまま階段を上がっていく。
目が慣れたからなのか、上の方が明るいからなのかわからないけど、あまり怖くない。
上に着くと、おじいちゃんの家の前に人影が見えた。
琢磨か先輩が心配して出てきてくれたのかな。
「あー、タイムリミットだな」
櫂が残念そうに手を離した。
そして、体をかがめ、僕の唇に触れるだけのキスをした。
優しい優しいキス。
離れていくとき寂しくて、思わず手を伸ばしてしまいそうになった。
「夏樹、おやすみ」
「おやすみ。心配だから合宿所に着いたら連絡して」
「了解」
櫂は僕の頭に手を置くと、来た道に向かって走り出した。
暗闇の中に消えていく櫂をじっと見送っていると、僕を見つけた先輩が走ってきて、僕の体ををぎゅっと抱き締めた。
「夏樹、良かった。心配したんだよ」
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