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琢磨がまだ眠そうな目で、僕を見た。
「夏樹……。あれ、何で夏樹がそこにいるの?
先輩が抱きついてたのは夏樹だったのに」
どうやら琢磨は先輩が僕に抱きついていたのを知ってるらしい。
「そうなの?
僕が起きた時には、二人で抱き合ってたけど」
「抱きあ……へ、変な言い方はやめてよ。
俺と先輩は何でもないんだから。
先輩、中司先輩、起きて下さい」
焦った琢磨は必死で先輩を起こしている。
「う……ん、何?」
琢磨が先輩の肩を必死で揺するので、先輩がうっすらと目を開けた。
「えーっ、何これ」
先輩は琢磨から離れると、辺りをキョロキョロ見回している。
「先輩、おはようございます」
僕が挨拶すると
「な、夏樹、さっきのは何かの誤解なんだ。俺が抱きしめていたのは夏樹のはずで、安永(やすなが)じゃないんだ」
と必死で言い訳をしてきた。
なんだか可哀想になってきたので種明かしをすると、二人は「良かった」とホッとしたようにため息をついた。
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