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近づくだけでも、勇気がいる。
外壁に描かれた不気味な絵と如何にも怖そうな効果音、そして、絶えず響いてくるお客さんの悲鳴。
それだけで恐怖で足がすくむ。
「ちょっと待って」
僕が櫂の腕を掴むと、櫂が悲しそうに見た。
なんで、そんな顔するの?泣きたいのは僕なのに。
「そんなに怖いですか?」
櫂が受付のお姉さんに聞くと、お姉さんは顔を真っ赤にして櫂に説明し始めた。
「もしよかったら、ご案内しましょうか?」
って、そんなサービス聞いたことないよ。
僕は段々腹が立ってきた。
「もう大丈夫です。
大人2枚お願いします。
はい。櫂、行くよ」
チケットを渡すと、櫂の背中を押して中に入った。
布一枚くぐっただけなのに、中は真っ暗で、空気がスッと冷えた。
ああ……何で入っちゃったんだろう。
すると、不気味なナレーションが聞こえてきた。
どうやら僕たちは、昔一家惨殺事件があった廃屋に迷いこんだらしく。ここに迷いこんで、生きて帰った人はいないらしい。
なんだよ、その設定は。
怖すぎる。
急に間接照明がつき、不気味に照らし出された人形が悲しい目で僕を見た。
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