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「行くぞ」
櫂に引っ張られて無我夢中で走る。
後ろから複数の足音が聞こえて、恐怖のあまり息をするのも忘れそうになる。
背中に何かが触れた気がしたけど、とにかく気にせず足を動かした。
「出口だ」
僕たちは転がるように出口から走り出た。
「お疲れさまでした」
明るい声を聞いて、やっと緊張が解ける。
「櫂、怖かったよ」
安心したら涙が止まらなくなってしまった。
こんな所で泣いたら、櫂が困るだけなのに。
だけど、櫂は迷惑そうにするどころか、僕に謝ってくれた。
「夏樹、ごめんな。あんなに怖いと思わなくて」
「本当に怖かったよ。
今夜眠れなかったら、櫂にも起きててもらうからね」
「うん、いいよ。今日は一緒に寝ようか?」
嬉しいけど、高校生の男二人が一緒に寝るなんて、親に変に思われちゃうよ。
だから、断ろうとしたんだ。
でも……
「今夜誰もいないんだ。親父たちは旅行だって」
櫂の言葉に思考が停止した。
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