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夏樹。
名前で呼んだだけなのに、その日は1日気分が浮き浮きしていた。
たったそれだけで、あの友達と並べたような気分になっていたんだ。
でも、全然違った。
俺は単なる先輩で、夏樹が好きなのはいつも一緒にいるあいつだった。
それに………
「仁(じん)、ぼんやりしてどうしたの?」
「あ、うん。何でもないよ」
俺は隣を歩く彼女を見た。
そう、俺には1年の時から付き合っている彼女がいるんだ。
進路が違うから最近はあまり一緒にいないけれど、付き合ってるのに変わりはない。
……彼女がいるのに、夏樹も気になるなんて。
自分が信じられなくて、嫌になる。
実は彼女には1度別れ話をしていた。
けれども、「悪いところがあったら直すから」と泣かれると強く言えず、そのままになってしまってるんだ。
いや、違うな。
彼女が悪いんじゃない。
夏樹に告白してもうまくいくはずがないことを知ってる俺は、彼女まで無くす勇気が持てないんだ。
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