中司 仁(なかつかさ じん)

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あ、そうだ。 鞄からバナナ・オレの紙パックを出して、夏樹に渡した。 「ぷっ。キャプテン、これ好きなんですか?」 「コーヒー買おうとして間違えたんだよ。甘いの飲むと元気が出るって言うだろ。だから……」 「ありがとうございます。ちょっと気になってたんですが、飲んだことないので楽しみです。いただきます」 夏樹はバナナが描いてある黄色いパックにストローを刺すと、怖々一口飲んだ。 「甘っ。………で、でも、美味しいです」 まだ目の端に少し涙を溜めたまま、無理して笑う夏樹が愛しくて仕方がない。 「良かった。じゃあ、また買ってやるよ」 「えっ…………」 ちょっと固まる夏樹が可笑しい。 見た目は可愛らしいのに、実は甘いものが苦手なんだよな。 それを知ってて、渡した俺も意地悪だけど。 でも、笑ってくれて良かった。
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