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「夏樹、映画終わったよ」
「あ、ごめん。ちょっとボーッとしてた」
笑いながら櫂を見ると、櫂が少し眉をひそめた。
「この映画、全然悲しくなんてなかったのに何で泣いてるの?」
「泣いてなんていないよ」
言った途端に、目から涙がポロリと溢れた。
「あれ、おかしいな。ゴミでも入ったのかな……」
涙を拭おうとして手を上げると、櫂に腕を掴まれた。
「夏樹、最近変だよ。何かあったの?」
僕は黙って首を振った。
何もないよ。何もないから、ちょっと悲しいんだ。
「嘘だ。さっきから、携帯をすごく気にしてるし、映画も途中から見てなかったし。
何かあるとしか思えないんだ。
……俺に言えないこと?」
櫂の顔が辛そうに歪んだ。
違うんだ。櫂のせいじゃないんだ。
「違うよ。本当に何もないんだ」
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