嫉妬

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「中司先輩からなんだ。 実はあの旅行以来先輩から連絡がなくて、何かあったのかちょっと心配してた。 今日、電話を気にしてたのはそのせいなんだ。割と定期的に連絡をくれてたから、気になっちゃって」 暗くて櫂の表情は見えないんだけど、たぶん悲しそうな顔をしてるんだろうな。 「櫂、こっちに来て」 入り口で立ち止まっている櫂を呼ぶと、僕は子どもが抱っこをせがむように両手を伸ばした。 ゆっくりと近づいてきた櫂にぎゅっと抱きつくと、櫂も僕の背中に腕を回して抱き締めてくれる。 寝てしまう前にお互いの気持ちを確かめあって、もう何があっても揺るがないって思えたのに、電話がかかってきただけで不安になるなんて……。 櫂に包まれて、気持ちが温かくなる。 そうだ。不安になれば、こうやって抱き締め合えばいいんだ。 お互いの思いをちゃんと口にして、確かめ合えばいいだけなんだ。
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