1645人が本棚に入れています
本棚に追加
「中司先輩からなんだ。
実はあの旅行以来先輩から連絡がなくて、何かあったのかちょっと心配してた。
今日、電話を気にしてたのはそのせいなんだ。割と定期的に連絡をくれてたから、気になっちゃって」
暗くて櫂の表情は見えないんだけど、たぶん悲しそうな顔をしてるんだろうな。
「櫂、こっちに来て」
入り口で立ち止まっている櫂を呼ぶと、僕は子どもが抱っこをせがむように両手を伸ばした。
ゆっくりと近づいてきた櫂にぎゅっと抱きつくと、櫂も僕の背中に腕を回して抱き締めてくれる。
寝てしまう前にお互いの気持ちを確かめあって、もう何があっても揺るがないって思えたのに、電話がかかってきただけで不安になるなんて……。
櫂に包まれて、気持ちが温かくなる。
そうだ。不安になれば、こうやって抱き締め合えばいいんだ。
お互いの思いをちゃんと口にして、確かめ合えばいいだけなんだ。
最初のコメントを投稿しよう!