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「ありがとう」
僕は櫂から少し距離をとり、電話に出た。
「もしもし、夏樹さんですか?」
電話から聞こえたのは中司先輩の落ち着いた声じゃなく、知らない女の人の声だった。
「はい、そうですが、あなたは?」
「私は仁(じん)の母親です。
何度もかけてすみません。
夏樹さん、どうか仁を助けてください」
電話の人は中司先輩のお母さんだった。
お母さんは泣いているみたいに声を震わせた。
「助けるって、先輩は病気なんですか?」
「分からない。でもこのまま放っておいたら仁は死んでしまうかもしれないの。
だから、お願いします」
先輩が死んじゃう……
僕は言われたことが理解できず、電話を落としてしまった。
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