放っておけない

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「あなたが、夏樹さん? 何度も電話してすみませんでした。 仁、喜ぶと思います。 来てくれて、ありがとうございます」 先輩の家を訪ねると、お母さんが深々と頭を下げてくれた。 僕は困って、後ろに立つ櫂と目を合わせた。 「あの……、頭を上げてください。 気にしてませんから。 それより、先輩は大丈夫なんですか?」 先輩のお母さんは、悲しそうに瞳を揺らした。 「あの子は、昔から何でも器用にこなして、親に心配をかけたことがなかったんです。 だから、私たちも甘えてたのね。すごくしっかりしてるから、逆にあの子に頼ってる所があったの。 あら、いつまでも玄関でごめんなさいね」 お母さんは僕たちをリビングに通してくれてコーヒーを出してくれた。そして、続きを話し出したんだ。 「それが、ここ2週間、ほとんど部屋から出なくて、食事も取らなくなったの。 だんだん痩せてきて、私たちを見ても『心配ないから』って力なく笑うだけなの」
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