1645人が本棚に入れています
本棚に追加
「あなたが、夏樹さん?
何度も電話してすみませんでした。
仁、喜ぶと思います。
来てくれて、ありがとうございます」
先輩の家を訪ねると、お母さんが深々と頭を下げてくれた。
僕は困って、後ろに立つ櫂と目を合わせた。
「あの……、頭を上げてください。
気にしてませんから。
それより、先輩は大丈夫なんですか?」
先輩のお母さんは、悲しそうに瞳を揺らした。
「あの子は、昔から何でも器用にこなして、親に心配をかけたことがなかったんです。
だから、私たちも甘えてたのね。すごくしっかりしてるから、逆にあの子に頼ってる所があったの。
あら、いつまでも玄関でごめんなさいね」
お母さんは僕たちをリビングに通してくれてコーヒーを出してくれた。そして、続きを話し出したんだ。
「それが、ここ2週間、ほとんど部屋から出なくて、食事も取らなくなったの。
だんだん痩せてきて、私たちを見ても『心配ないから』って力なく笑うだけなの」
最初のコメントを投稿しよう!