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「櫂、待って」
櫂を追いかけて外に出ると、櫂は既にヘルメットをかぶってバイクにまたがろうとしていた。
ここまで櫂のバイクに乗せてきてもらったんだ。
「櫂、どうして……」
付き合ってから、僕が先輩と二人でいるのを嫌がってたのに。
櫂はヘルメットを脱いで、僕に笑いかけた。
「泣きそうだな。そんな顔されたら、置いていきたくなくなるだろ?」
「じゃあ、何で?」
「このまま連れて帰っても先輩のことばっかり気になるだろ?
だから、今夜は先輩に付いていてあげろよ。
だけど、たまには俺のことも思い出してくれよな」
僕は誰もいないことを確認して、櫂に抱きついた。
「たまにじゃないよ。ずっと櫂のこと考えるから。
櫂、ありがとう」
『ずっと』なんて無理だってお互い分かってるけど、それでもそう伝えたかった。
だって、一瞬でも櫂を忘れるなんて不可能だから。
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