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「詳細は後で聞くよ。
それより、夏樹を俺の部屋に運ぶの手伝って」
先輩の言葉を聞いてハッとする。
僕、何やってるんだろ。
具合が悪い先輩の看病に来たのに……。
「僕はもう大丈夫です。
だから、先輩はベッドに戻って下さい」
先輩が僕を見て、優しく微笑んだ。
そこにいたのは、さっきまでの弱々しい先輩じゃなく、いつもの先輩だった。
「じゃあ、二人で戻ろう。
礼、後で話を聞くから」
「か、可愛げない。
心配してアメリカからわざわざ帰った来たのに、なんだその態度は。
夏樹君みたいに、『お兄さん』って言ってみろよ」
礼さんって僕より7歳も年上でアメリカでバリバリ仕事してるのに、今はまるで子供みたいだ。
先輩は礼さんから目をそらすと、すっと立ち上がった。
さっきまでの危うさは感じられない。
「夏樹、おいで」
僕は差し出された手を握って立ち上がり、先輩に連れられて部屋を出た。
「そうだ。礼の事をお兄さんなんて言わなくていいからね。呼び捨てで大丈夫だから。
精神年齢は小学生以下なんだから」
酷いことをわざと礼さんに聞こえるように言ってから、部屋のドアを閉める。
「仁のバカヤロー」
礼さんの声が聞こえたけど、先輩は全く気にしてないようだ。
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