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―お別れ会当日―
夢の中はポンポン場面が変わる。
まるで映画やドラマを見ているようだ。
「夏樹、大丈夫か?」
当日になっても嫌がる僕の頭を、櫂が優しく撫でてくれる。
「後ですごいおまじないしてやるから頑張れ。母ちゃんに聞いたから間違いないからな」
「うん」
………櫂が心配してくれた。
それが嬉しくて、僕は頑張ったんだ。
毒リンゴを食べて倒れた僕は、なるべく動かないように目を閉じていた。
後は王子さまの櫂がキスするふりをして、僕が目を覚ましたら終わりだ。
さっきまで明るかったのが、櫂の顔が近づいてきたのか暗くなる。
その時……
チュッ と唇に柔らかい何かが触れた。
薄目を開けると、櫂が照れ臭そうに笑っていた。
家族にしたのを除けば、多分これが僕のファーストキスだ。
びっくりする僕に櫂が耳元で囁いた。
「これで夏樹は幸せになれるからな」って。
目を覚ました僕は、しばらくぼーっとしていた。
昨日、櫂にカラオケで2回もキスされたから、こんな夢を見たんだ。
僕はそっと唇を触った。
櫂、僕は幸せになれるかな……。
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