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『カランカラン』とドアベルの音が鳴る。
「いらっしゃいませ」
僕は1週間でやっと身に付けた笑顔でお客様を迎える。
「え、櫂……」
目の前には僕を見てびっくりしている櫂が立っていた。
「夏樹、こんなところで何やってるの?」
どうしよう。
頭が真っ白になって、どうしたらいいのか分からなくなる。
その時、櫂の後ろから、櫂と同じくらい長身の男の子が二人顔を出した。
「櫂の知り合い?」
「あ、君知ってる。
毎日櫂と一緒に大学に来てる子だろ?
へえ、制服だと雰囲気違うね。
いつもは、もっと可愛い感じなのに」
黙ったまま何も言わない櫂と、にこにこ話しかけてくる櫂の友達、どちらにも返事さえ返せないでいると、琢磨が助けに来てくれた。
琢磨は僕をさりげなく下げて自分が前に出ると、櫂達を席に案内してくれた。
とりあえずお水を用意しないと。
自分の仕事を思い出した僕は、人数分のお水を用意する。
そこに琢磨が戻ってきて、「僕が行くから」とお水とメニューを持っていってくれたんだ。
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