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「あ、僕ね、1週間前からカフェでバイトしてる。
あそこは今日接客してくれた琢磨の叔父さんのお店で、紹介してもらったんだ」
「へえ……。それで?」
「櫂にバイトの事、言おうと思ってたんだけど、制服が似合わないから恥ずかしくて言えなかったんだ」
隣で『チッ』と舌打ちが聞こえた。
「気に入らない。
夏樹が琢磨って親しげに呼ぶのも、バイトを紹介してもらうくらいそいつを信頼してるのも、俺に隠し事をするのも、客に笑顔を振り撒くのも…何もかも気に入らない。
夏樹は、俺の気持ちなんて全く考えてくれてないんだな」
櫂の気持ち……
「美夏のことなら「だから、美夏なんて関係ないだろ!」」
「えっ…」
「俺とお前の事だろ!」
僕と櫂の事?
「夏樹、お前が好きなんだ。
この気持ちが迷惑なら、はっきり聞かせてくれよ」
櫂は僕の服をぎゅっと握ったままうつむいた。
肩が震えているから、泣いているのかもしれない。
知らない内に櫂をこんなに苦しめていたなんて。
ごめん。
櫂は美夏が好きなんだって、ずっと勘違いしてた。
ううん、違う。
自分が傷つきたくないから、櫂は普通に女の子が好きだから仕方ないんだって思い込もうとしてたんだ。
……僕の気持ちを伝える努力なんて、全くしてこなかった。
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