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「お母さんは後から行くからね。
二人とも頑張ってね」
「「うん。行ってきます」」
二卵性だけどさすが双子。僕たちはぴったりと声を揃えて母さんに挨拶した。
3月に入ったとはいえ、まだ空気は冷たい。
けれども、柔らかい日差しが春が近いことを告げていて、心がふわりと軽くなる。
門を出ると、斜め前の家の壁にもたれて携帯を見ていた蓮見 櫂(はすみ かい)が僕たちに『おはよう』と笑顔を向けてくれる。
その笑顔は、嬉しい気持ちと同時に悲しい気持ちを僕にもたらす。
僕たちも『おはよう』と笑顔で返す。
………でも、上手く笑えたかどうか自信がないんだ。
僕たちと櫂は幼稚園の頃からの幼馴染みだ。
だから、美夏と同じだけ櫂とも一緒に登校した。
家の前の道は交通量が少ないので、僕をまん中に挟んで左に美夏、右に櫂と3人で並んで歩く。
すると、すぐに美夏と櫂が喧嘩を始める。
「あー、櫂との登校が最後だと思うと、すごく嬉しい」
美夏が言うと、「そうだな、俺も」と櫂が返す。
「何よ。私だけじゃなく夏樹も思ってるのよ。
ねえ、夏樹?」
「そうなのか?」
同時に聞かれて言葉に詰まる。
「いや、僕は……」
「ほら、夏樹は嬉しいなんて思ってないよ。
まあ、俺たちは4月からも一緒だけどな」
そう、僕と櫂は同じ大学に進学するんだ。
高校のように毎日同じと言うわけにはいかないと思うけど、一緒に行く事が出来るんだ。
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