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バイトに行くと、琢磨が困った顔で窓際の席を見た。
「夏樹、お客さん来てるよ。会うまで帰らないらしい」
「お客さん?」
誰だろ?
そっと見ると、美夏の彼の妹の千帆さんだった。
「いらっしゃいませ。注文はお聞きしましたか?」
「あ、夏樹さん、こんにちは。
はい、アイスティーを頼んでます。
あの…お仕事中に押し掛けすみません。
美夏さんに聞いて、どうしても伝えたくてきてしまいました」
美夏かぁ。
どうせなら、家に来て欲しかったな。
仕事中にこの子は一体何を言うつもりなんだろう。
「あの、私、和臣(かずおみ)から夏樹さんの事をずっと聞いてて、憧れてたんです」
「ありがとう」
和臣って言うのは高校のテニス部の後輩だ。僕らは武山だから、タケって呼んでいたけど。
憧れてたって……タケはどんな風に僕の事を言ってたんだろう。
「それでこの前お会いして決めたんです。私、あなたと『カランカラン』」
「あ、ごめん、お客さんだから行くね」
話を遮るのは申し訳ないけど、バイト中だし仕方ないよね。
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