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玄関のドアを開けると、千帆さんが立っていた。
これは夢?
だって彼女は、いわゆる彼シャツと言われる格好をしているんだ。
つまり、男性用のシャツのみを着ていて(下着はつけているけど)、細い素足がシャツからすらりと伸びている。
「夏樹さん、お帰りなさい」
真っ赤になりながら可愛く言われて、戸惑うばかりだ。
「千帆さん、何してるの?」
「あ……彼シャツって、男の人の憧れだって聞いて…」
恥ずかしそうにうつむかれても……困るよ。
僕は大声で美夏を呼んだ。
「夏樹、どうしたの?」
美夏が慌てて階段を駆けおりてきた。
そして、千帆さんを見ると、ぽかんと口を開けた。
「千帆ちゃん、何してるの?」
「彼シャツです」
美夏は僕の顔を見た。
双子だからか美夏が考えていることが分かる。
「二人って付き合ってるの?」
だから、僕は声に出して、きっぱりと否定した。
「違うよ。付き合ってないよ。
それに、あれは僕のシャツじゃないし」
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