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「じゃあ、あのシャツは?」
「僕のだよ。千帆が勝手に着たんだと思う」
美夏の後ろにいた葛城さんが、申し訳無さそうに言った。
お兄さんのシャツをわざわざ人の家で着ている意味が分からない。
僕は美夏を呼び寄せた。
「どういうつもり?
美夏の彼の悪口は言いたくないけど、あの兄妹二人とも変だよ」
「ごめんね。夏樹に嫌な思いさせる気なんてないんだけど、千帆ちゃん夏樹に振り向いてもらおうと必死なんだよ」
「とにかく僕は出掛けるから、その間に帰ってもらって」
酷いことをしているのかもしれない。
でも、美夏を利用して僕に近づいてくるのが、すごく嫌だったんだ。
僕はそのまま外に出た。
そっか、今夜は父さん達町内会の旅行で一泊だった。
もしかして、葛城さん、泊まっていくつもりなのかな?
益々帰りたくなくなってきた。
まんが喫茶でも行こうかな………。
駅に向かって歩いていると、バイト帰りなのかラフな格好の櫂に会った。
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