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だから、僕が怒って飛び出したことも、帰って来ないのも初めてで、心細かったんだと思う。
『はぁ』
僕がきっちり服を着ているのを見て、櫂がため息をついた。
そして、憎々しげに美夏を睨むけれど、美夏はそんなことにはお構いなしに、僕に抱きついてきた。
二卵性とはいえ、僕たちはやっぱり双子なんだ。
普段は何も感じなくても、一番身近な存在なんだ。
「櫂、ごめんね。居させてくれて、ありがとう。
でも、今日は帰るね」
「仕方ないな。夏樹、貸しだからな。
次は、絶対だから」
櫂の鋭い眼差しが、僕を射るように突き刺さった。
「ごめん」
僕はそれしか言えなくて、泣きじゃくる美夏を連れて家に帰った。
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