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朝三人で通った校門を帰りは一人で通る。
なんかこれからの僕を暗示しているみたいだな。
寂しいけど、我慢しないといけないんだ。
その時美夏からメッセージが届いた。
「演劇部のみんなとご飯行くから遅くなるかも。
お母さんたちには上手く言っておいて。
お願い」
頭をペコペコ下げる動画のスタンプが付いている。
仕方ないな。
「今日はご馳走だから早く帰って来てね」
母さんが今朝あれほど念押ししてたのに。
仕事の休みが取れず、卒業式には来れなかった父さんも早く帰るからって張り切っていたのに。
二人ともがっかりするだろうな。
でも大丈夫か。
二人とも美夏の我が儘には慣れてるから。
小学校までは空手をしていた美夏が、中学から突然演劇部に入った。
背は158センチと高くはないけど、色が白くて綺麗な顔立ちをしている美夏なら、主人公も出来たかもしれない。
けれど、美夏は、最後まで裏方しか引き受けなかった。実は小さい頃からデザイナーになりたかったらしく、そんな事家族の誰も知らなかったんだ。
それから6年、美夏はデザイナーという夢を懸命に追っているんだ。その姿は僕には眩しくて、櫂が惹かれるのも無理はないって思ったんだ。
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