第十五章・旅立ちのために

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 『すいません遅くなりまして。木暮を殺したの犯人が逮捕されたとききまして……』 あの時、犯人しか知り得ない事柄を言った。 警察は連続殺人だとは言っていなかったのだ。 原田守殺害の罪を被せることさえ出来れば…… 殺人が発覚した時、マネージャーはMAIさんを逮捕させようと目論んだ。 だからボンドー原っぱの恋人だと噂を流したのだ。 それはアマチュアロックバンドのボーカルを獲得する手段でもあったのだ。 木暮敦士が死んだのは、麻衣があれを買ったからだと思っていた。 愛する人を殺してしまったのは、麻衣が悪巧みをしたせいだと逆恨みしたのだ。  原田守の葬儀の日、ゴールドスカルのペンダントヘッドを彼に渡したのはマネージャーだった。 マネージャーは麻衣の反響を見たかったのだ。 ゴールドスカルのペンダントヘッドは、きっと木暮敦士との思い出に繋がる。 そうなれば、彼は麻衣から離れるに違いないと踏んだのだ。 きっと二人は別れる。 マネージャーはそう思い込んでいた。  でもマネージャーはもう一つミスをおかした。 俺に霊感があると知らないマネージャーは原田守の首にあのゴールドスカルのペンダントヘッドを掛けたのだ。 もっとも、いきなりのスキンヘッドに驚いた原田守が木暮の兄貴の携帯に電話するとは思ってもいなかったのだ。 折りさえあれば何時でも殺害しようと、マネージャーは原田守の後を付けた。 でも原田守が向かった先はバス停でも駅でもなかった。 原田守が着いた先はイワキ探偵事務所だったのだ。  木暮の兄貴の携帯電話に残った映像。 パソコンに保存されていたボンドー原っぱが隠し撮りした映像。 それらを見比べている内に俺は何か違和感を覚えた。 俺はどうして彼女に会いたいと懇願した。  「あのペンダントヘッドは私が買ってしまっておいた物に間違いありません」 MAIさんは俺の前でそう言った。 そんなことを聞きたくて桜井刑事に伝言した訳ではない。 俺はただ、彼女を助けてやりたかったのだ。 俺の霊感全てを使って、木暮敦士がMAIさんに伝えたかったことを代弁したかったのだ。  MAIさんは道端で男性の売っていたゴールドスカルのペンダントヘッドを見つけた。 いや、魅入られたと言うのが正解かも知れない。 それは握り拳位い。 流れた胎児の大きさだったのだ。 全身が震える。 ゴールドスカルから目が離せない。
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