第十五章・旅立ちのために

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 ボンドー原っぱの恋人はやはりマネージャーだった。 木暮敦士亡き後、マネージャーは原田守の誠実な態度に救われたのだ。 意気消沈しているマネージャーを原田守は癒したのだ。 親友だった木暮敦士の死は原田守自身でも辛いはずなのに、彼は優しかった。 その人柄に惚れ込んでしまったのだった。 木暮敦士を殺した犯人がマネージャーだと夢にも思わない原田守。 だから付いていく決意をしたのだった。 マネージャーは、原田守のギターテクニックを売り出そうとしていた。 木暮敦士のいたロックグループが売れたのは、バックに確かな技術のバンドがいたからなのだ。 マネージャーはその事実を知っていた。 それでも、木暮敦士に賭けてしまったのだった。 その事実を反省し、気持ちを新たに他のメンバーのために立ち上がったのだ。  でも事務所の方針でコミカルなバンドを目指すことになってしまったのだった。 ボンドー原っぱと言う名前にマネージャーは抵抗があった。 だから必死に止めようとしたのだ。 でも覆らなかった。 物の試しにと出場した視聴者参加型テレビ番組で大ウケしてしまったからだった。 社長はそれで気を良くして、本格的に売り出したのだ。  そんな時MAIさんに彼氏が出来たことを知ったのだ。 未だに自分が殺した木暮敦士のことが忘れられないマネージャー。 又ストーカーのようにMAIさんを付け回すようになったのだった。  MAIさんと隣り合わせたカラオケルームで、マネージャーは新恋人の歌声を聴いたのだ。 『欲しい』と思った。 心血を注げる相手に又出逢えた奇跡に震えた。 その途端、マネージャーの心の中にはもう原田守は居なくなっていた。 その代わりに、邪魔な存在としてその大半を占めるようになっていったのだ。 ボンドー原っぱなんて奇妙な名前の原田守は恋人でも何でもなくなっていたのだった。  MAIさんの実家が美容院だと知っていたマネージャーは、其処が居抜きで売りに出されている情報を得て利用することにした。 だから原田守を其処に移動したのだ。 マネージャーは見よう見まねで原田守の頭をスキンヘッドにしたのだ。 そして行動を監視した。 イワキ探偵事務所を訪ねた時には驚いた。 でもその前に携帯に保存してあった画像は全て消したから安心していたのだ。 まさか、木暮敦士が恋人だったMAIさんの画像を名刺に入れていたとも思わずに……
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