嘘から出るまこと

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「ありがとうございます」  彼女は僕の左隣に腰を落とす。「暑いですよねぇ」  僕の思いが届いてしまったのか、はたまた陽がさしていなかったからか、そんなことを僕に言いながら、彼女はサングラスを外した。 瞬間、僕はそこに現れた彼女の素顔に目を奪われた。失礼ながら、とびきりの美少女というわけではない。健康的な少女という印象こそ受けるものの、鼻は低く格別に小顔というわけでもない。ただそんな素朴さの中にきらりと光るものがあるとすれば、その瞳だった。  確か、オッドアイと言うのだろうか、両眼の虹彩が左右で異なっているのだ。右はこげ茶色、左はやや青みがかっている。僕が目を奪われたのは、その左眼の方だった。日陰にあって、その青々とした瞳の深遠な輝きはむしろいっそう際立って映ったのだ。  なんて綺麗な瞳をしているんだ。思えば、僕の胸の動悸はどうもここから始まっていたらしい。もっとよく見てみたい。そんな感情が、僕の心中を席巻していく。  だが、年頃の女の子を凝視し続けるのは社会的に見て不埒千万である。だから、実際は彼女の左眼を注視したのはほんの一瞬で、「もう少し早く来れば、話題の怪物くんを見られたのに」などと言って微笑するに留めた。
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