一日目~二日目

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 最近仕事が嫌いだ。  入社して一年あまりが過ぎ、やり慣れてしまった仕事はこれ以上昇華させる必要もなく、ただただ毎日同じ作業を繰り返す。だいたい半分くらい寝ている感覚でも、結果として完璧にこなしてしまっているほどだ。経理部で重要なのは使用経費の計算を間違えずに行うこと。最初は堅苦しい感じがしたが、今となっては小学生でもこなせるのではないかと思えるほどに楽な作業である。  この会社に就職したては情熱を持っていた気がする。どの新入社員よりも早く仕事を覚えようと躍起になっていた。  だけど一年が経つと現実が見えてくる。女の出世は難しいという現実。実際十五年も勤めている三宅さんは平社員のままだ。能力は充分に備わっていて、現係長なんかよりも仕事は早く丁寧で機転が利く。統率力もあり指示も的確で、管理職向きなのは言うまでもない。なのに出世は男の特権と言わんばかりだ。  実力主義を持たず、男尊女卑の傾向が強い。このご時世にこんな排他的な思想の会社があっていいのかとも思うけど、自分の生活を安定させるには仕方のないことだ。  こんなことを考えていると当然だと苦笑する。もう何回も繰り返した苦笑い。そうしているとわたしは、たまに笑いが崩れていることがある。でも気付かないふりをする。  わたしが経理部に異動させられてから八ヶ月。  わたしは、その前の四ヶ月は営業部に勤務していた。仕事はコピーとお茶汲みの毎日。いつかはまともな仕事ができると奮闘していた毎日はなんだったのか。わたしの頑張りは空しく、経理部に欠員がでたための補充として経理部に異動させられた。  それから八ヶ月。  わたしは仕事に飽きている。
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