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「祐真兄、あたしも……愛してる。いままで云えなくてごめんなさい……」
消え入るように伝え、そして途切れそうに息を囁くくちびるにそっと自分のくちびるを合わせた。
最初で最後となる祐真へのキスは温かく――。
病院に到着後まもなく、祐真はその生を全うした。
享年二十三歳。
死因、外傷性くも膜下出血。
祐真の最期を看取った少女がだれであったのかわかることはなかった。
外傷のはっきりした原因もわからず、ただ死の直前の数日間、祐真が頭痛を抱えていたことを云い残した少女は、救急隊員の到着で騒々しいなかに忽然と姿を消した。
それはたった三日まえのことなのに、昂月のなかではすでに彼女が現実に存在したのかどうかさえ怪しくなってきている。
昂月の空洞が埋まることはなくなった。
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