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2.パラライズ-麻痺-
「昂月……」
ふと名を呼ばれ、祭壇から目を外して視線を正面に戻すと、幼なじみの時乃慧(トキノケイ)が気遣わしげな面持ちで立っていた。
そのすぐ後ろには祐真と同じ斉木事務所に所属するバンド、“FATE”のメンバーがそろっている。
「大丈夫……?」
そう云うのが精いっぱいのようで、目を真っ赤にした慧は言葉に詰まる。
「大丈夫か?」
重ねるように訊ねたのはFATEの専属作曲家であり、祐真の中学時代からの親友である日高良哉だった。
その瞳にはつらさが見え隠れしている。
昂月はほかのメンバーにも目をやった。
彼らは祐真の良き理解者だった。その最高の友人たちの瞳にも痛みが溢れている。
自分のわがままが招いた結果が目のまえにあった。
「うん……ありがと……」
昂月がかすかに笑んで返事をすると、慧が堪りかねたように泣きだした。
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