1人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
「やる。参拝者へのサービス」
アイスバーをスッと差しだし、彼は予想どおり無愛想な説明をした。
彼は、この神社の宮司の息子。ノラ猫目当てで、賽銭も入れない私が気に食わないらしい。よく睨んでくる。だからしゃべったことなんて一度もなかった。
それがどういう風の吹きまわしか、私の横に座り、声をかけてきたのだ。
「参拝者じゃないんですけど」
動揺する私をよそに、日向ぼっこ中の猫ちゃんが去っていく。
「……」
その姿を目で追っていると、無言の圧力をかけられた。
「……じゃ、遠慮なく」
断る理由も見つからず、恐々とアイスバーを受けとろうとしたら溶けて落ちてしまった。
気まずいムードの中、残った棒にふと視線を移した。すると、そこには『スキです』と書かれていて。
「そういうことだったんだね。むっつりスケベさん」
夏の太陽みたいな頬の彼に向かって、私は微笑みかけた。
最初のコメントを投稿しよう!