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端整な顔立ちに、濃い色の髪と碧眼が映える、なかなかの男前だ。
「驚かせてすまなかった。王城へ向かうつもりだったのだが、飛竜のことをすっかり忘れていてね。都合良く王城の使用人を見つけたと思い、声を掛けさせてもらった次第だ」
そう言うと、男はマナの衣服を指で差した。
なるほど、確かにこの服は侍女のエステルの仕事着であり、王城の使用人のもので間違いなかった。マナが納得して顔を上げると、男は期待を寄せるような眼でマナを見ていた。
要するに、この男は宴のあいだ飛竜を置いておける場所を知りたいのだろう 。
騎士団の厩舎の場所なら知ってはいた。けれど、飛竜ともなると話は別だ。
「王城に行って直接聞いたほうが良いと思います」
マナが言うと、男はにやりと口の端を上げて。
「では、案内してもらおう」
「へ……?」
間髪入れず続けられた男の言葉に、マナは思わず間抜けな声を出してしまった。
唖然とするマナを他所に再び兜を被ると、男は軽々とマナを抱き上げて、そのまま飛竜に跨った。
ぐんと手綱を引かれ、飛竜が大空に舞い上がる。
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