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「兄上が王位継承権を得たことが原因で、父は私の母を正妻に迎えることができなかった。母は神竜に仕える巫女でありながら、その任を放棄し王家に取り入った卑しい者として、皆に見下され、孤独の内に死んだ。父はそのことで……私と母のために、兄上を憎んでいる。それでも……」
遠い昔の、幼い日の記憶がセイジの胸に蘇る。
父に認められたいと願った兄と、その願いを共に叶えると心に誓った幼い自分の姿が。
「私は兄上をお護りすると、そう誓ったのだ」
その誓いが、いずれ己の首を絞めることになると、なぜ、あのとき予測できなかったのか。
自虐的な笑みを浮かべ、セイジは空を仰ぎ見た。
今、この身を叩きつける雨が、兄王子への親愛も、幼なかったあの日の誓いも、全て洗い流してくれたなら。
如何なる犠牲も顧みず、彼女を奪ってしまえたならば、どんなに楽になれただろう。
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