第6話 花嫁と霧の庭園

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「おはようございます。こんなに朝早くからお仕事ですか?」  マナが訊ねると、わずかに遅れてセイジの声が返ってきた。 「ええ、厩舎の飛竜の餌やりです」 「まぁ、それは大変ですね」 「そうでもありませんよ」  返事は聞こえるものの、セイジが近づいて来る様子はない。  不思議に思ったマナは、跳ねる泥にもお構いなしにぬかるみのなかを歩き出した。  はっきりと相手の姿が確認できる距離まで近付いて、ようやく目にした彼の姿にマナは驚きの声をあげた。 「ずぶ濡れじゃないですか! もしかして、昨夜からずっと外に……?」 「いえ、まぁ……少々感傷に浸っていまして」  マナの問いに決まりが悪そうに答えながら、セイジが濡れた前髪を掻きあげる。  胸元からハンカチを取り出したマナが、セイジの頬をつたう水滴を拭おうとすると、セイジは一歩後退し、はぐらかすように口を開いた。 「兄上の容態は……?」  セイジに問われ、マナは表情を翳らせた。  王の間で気を失ってから、セイラムは一度も目を覚ましていない。  ベッドの上で人形のように眠るセイラムの姿を思い出し、マナは黙って首を振った。
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