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天井に煌めくシャンデリアがいつもより輝いて見える。華やかな紋様が散りばめられた絨毯のうえをゆっくりと歩きながら、マナは周囲を見渡した。
飾り立てられた椅子やテーブルが並ぶ大広間に溢れた大勢の客人は、宴の主役であるマナを拍手喝采で迎え入れた。
中央の玉座に座る父王の前にマナが進み出ると、わずかに遅れてふたつの人影が広間に姿を現した。
彼らが今夜招かれたリンデガルムの王族であることを、振り向かずとも、マナは直感的に感じ取った。
「お目にかかれて光栄です、陛下。リンデガルム第二王子セイラムと申します」
敬愛の意を込めて発せられたその声に違和感を覚え、マナはハッとして振り返った。その瞳に、セイラム王子の――婚約者の姿が映る。
リンデガルム王家の紋章が刻まれた礼服に身を包んだ青年は、黒鉄の鎧のあの男によく似た端整な顔立ちをしていた。けれど、煌びやかな光に輝く蜂蜜色の髪は、彼があの男とは別人であることをはっきりと示していた。
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