第1話 花嫁の憂鬱

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 リンデガルム王国は、大陸の北北東に位置するリンデガルム峡谷に王城を構える大国である。  国土のおおよそ半分は年中霧に覆われ、陽の光が行き届かない不毛の地となっているため、国民の多くは常に飢えに瀕しているという。  だが、その飢渇ゆえに国民の上昇志向は強固なものであり、戦争ともなれば、そこらの裕福な国では相手にならない。事実、リンデガルムは数多の国から領土を奪い成長を続ける、戦に支えられた国でもあった。  不屈の精神をもつ騎士達と共に戦で恐れられるのは、リンデガルム峡谷に生息するヴァンクーゲルと呼ばれる翼竜だった。  気性の荒い翼竜を乗りこなし空を駆けるリンデガルムの竜騎士は、一騎で通常の馬に騎乗する騎士のおよそ十騎分の戦力に値するとされており、群れを成して戦場の空を覆うその姿は、さながら死神の影のようでもあった。
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