第1話 花嫁の憂鬱

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*** 「素敵ね……」  窓辺に頬杖をつき、マナは小さくため息を吐いた。その瞳には、朝焼けの空を舞う数頭の飛竜が映っている。 「恐ろしい使い魔のようじゃありませんか。ひとを食べる飛竜だと専らの噂ですよ。特に神竜ディートリンデは気性の荒さも桁違いで、王位継承権を得るために彼女を手懐けようとして命を落とした王族は数知れないとか」  手入れを終えた花瓶をミニテーブルの上に飾り付けたエステルが、諫めるようにマナに言った。 「詳しいのね」 「当然、調べさせていただきました。このリンデガルム王国は、大切な王女様の嫁ぎ先ですもの」  きょとんとするマナに向かってそう言うと、エステルはふふんと鼻を鳴らし、胸を張った。  ラプラシアにいた頃と変わらないエステルの親しげな振る舞いに、浮かない様子だったマナの顔にも自然と笑みが浮かぶ。
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