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わたしの一生は、思っていたよりもずっと短いものでした。
享年六十五歳。娘と孫に看取られて、安らかな最期だったと記憶しています。
わたしには、はやくに亡くなった夫がおりました。わたしが十七になった年に結婚し、戦争で亡くなったのです。
夫はとても穏やかで優しいひとでした。当時のような特別な事情がなければ、わたしのような娘が恋をすることさえ憚れるような、わたしには勿体無いほどの素敵なひとでした。
それでは何故、わたしは夫と夫婦になることができたのか。
いいえ、夫婦だなんて、とんでもない。
本当は、わたしがそう思いたかっただけなのです。
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