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そんなことを考えていると玄関の鍵を開ける音が聞こえた。少女は素早く反応し、窓の縁から部屋に戻った。
「ただいまー。」
母の声だ。嬉しくも恐ろしい複雑な感情にとらわれる。
少女は慌てて机の上に参考書を広げ、座って勉強していた振りをする。
少女の部屋に向かって来る足音が聞こえて来る。
この足音が少女は何よりも恐ろしかった。
心拍数が上がる。息が詰まって来る。今すぐあの窓から飛び降りたくなる。
でも逃げられない。まだ生きたいのだ。
「帰ってたの。おかえり。テストの点数はどうだったの?」
優しい母の声にホッとする。今日は機嫌がいいようだ。
「うん、よかったよ。98点。」
少女は誇らしげに答えた。先生にも褒められたのだ。母も喜んでくれるに違いない。
でも点数を告げると、母の顔は険しくなり、歪んだ。少女は身構える。そしてこれから襲って来るであろう痛みに目を瞑った。
「98点…。何で100点じゃないの?隣の優希ちゃんは平均点満点に近かったらしいわよ。」
激しい口調だが、手は上がらない。
少女はホッとする。
比べられることには慣れた。
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