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「あんたは何をやってもダメね。何でできないの?やってること全部無駄じゃない。バカなの?なんで100点も取れないの?何でその2点が取れないのよ!!」
母は少女を傷付ける言葉をよく知っている。執拗に責めて侮蔑する。
「完璧じゃないなら生きてる価値ないから!死んで!!あんた、そんなバカでよく生きてられるね。」
この部屋は、家は、牢獄でしかない。学校が唯一の逃げ場だ。自分の役目は母の自慢になること。
でもどう頑張ったって母の望む結果が出せない。
98点じゃダメなのだ。なぜ2点を取れなかったのか責められるだけだ。
頑張っても無駄だ。
少女は次第に無力感に支配されるようになった。
頑張っても結果が出ないなら何もやらない方がいい。
母の激しい罵倒がどんどん遠くなる。もう聞こえない。母の険しい顔が見える。口元は動いているが無声映画のように何も聞こえない。
少女にできることは母の言葉をできる限り自分から締め出すことだった。
どれくらいの時間が経ったのだろう。
母はひとしきり罵倒してすっきりしたのか、突然優しく微笑んだ。
「あなたはできる子なんだから。大丈夫よ。」
少女をぎゅっと抱きしめる。
化粧品のいい香りがする。少女はこの香りが大好きだった。母のこの変わりようは常に少女を混乱させた。
愛されているとすがりつけるたった1つの理由だ。だからまだ生きていたいのだ。生きていいと今、許してもらったのだ。
「うん、がんばる。」
少女は泣きながら答えた。
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