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僕は虐められっ子と呼ばれる奴だった。
勉強もスポーツも中の上。
背も少し高めな位で、少し太目だったかも。
肌はアトピーで、常にガサガサだった。
でも、虐められる理由はそれだけでは無かったのだろう。
家庭も複雑だったし、友達が出来ても長続きしなかった。
物心着いた時から虐められていたから、原因何て正直分からない。
会話をしても話は弾まないし、どうかすると嫌な顔をされた。
中学生になった時からだ。
夏が嫌いになったのは。
土から這い出て、1週間で死んでく彼奴ら。
秋口にゴロゴロと転がってる奴等も嫌いだが、何よりも脱ぎ散らかした殻が最悪だ。
茶一色で、今にも動きそうで。
中は空のくせして、不気味だ。
そんな奴等を鞄に入れられたり、背中にくっ付けられたり、不意打ちを喰らうものだから、余計に恐怖を感じた。
高校では、僕を知る者は殆んど居なかったのに、心機一転と頑張るはずが……。
同姓に嫌われ、弱味が奴等だとばれ、又もや夏に殺られた。
仲の良い友は慰めてはくれたが、男の絶叫はクラスの笑い種となった。
家族でさえ、どうかすると僕の子に見せる為にと玄関に奴等の殻を置いていたりする。
見かけると僕は跳び跳ねるようにその場から逃げ出すのだ。
奴が居なくなるまで、家にも入れずに……。
社会に出た今でさえ、梅雨が明け奴等の声を聞くと
、その度に昔を思い出す。
あの不意打ちの恐怖を……。
大の男が……と、皆は笑うかも知れないが、駄目な物はダメなんだ!!
この世界から一匹残らず抹殺されれば良いのにと、思わずにはいられない。
頼むから、夏なんて無くして欲しいよ。
蝉時雨の熱帯夜にそんな事を思い、仕事で疲れた足を引きずり家族の待つ我が家へと帰る。
門に手を掛けた時だった。
思わず、悲鳴を上げる。
門戸に奴が両手を引っ掻けるようにしがみついていたのだ。
「糞ッ!夏なんてなくなっちまえばいいのに~。」
……………………………………end.
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