夏。

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真っ青な空。入道雲がもくもくと広がっている。テレビの中では今年一番の猛暑日と読み上げられており、アスファルトは熱した鉄板の上のようだ。ミンミンと蝉が大合唱を繰り広げており、鳴り止むことがない。 ゆらゆらと蜃気楼に揺らめく、空高く伸びた向日葵たち。灰色の塀は影などほとんど作っておらず、なんの役目も果たしていない。 僅かに吹く生暖かい風に、チリンと風鈴が頼りなく鳴った。 「あっつーい!」 少女は大きな声を上げた。1つに束ねたポニーテールが跳ねる。縁側に腰掛けた足をばたばたと勢いよく上下に動かした。 「夏なんてなくなればいいのに!なんで夏なんてあるのよ!」 「しょうがないじゃない。日本の季節は春夏秋冬の4つで成り立ってるんだから。春からいきなり秋になったら……あ、いけるかも。」 隣に並ぶ美少女が、ぱっちりとした目を細めて、クーラーボックスから、アイスを取り出し、包み紙を割いた。ビリっという音に、少女はぴくりと反応し、勢いよく美少女……正確にはアイスに目を向ける。 「ずっるーい!わたしにもちょうだいよ!」 「あげないわよ。私のバイト代から出したのよ!」 「なにそれ!泉ちゃんはいつもそう!ケチ!」 「なんとでもおっしゃい!とにかくあげないからね!」 アイスをめぐる攻防戦を繰り広げること5分。ものの見事に干からびた2人がいた。茶色のポニーテールの尻尾と黒の艶のある背中までのストレートの髪が宙を舞う。 「あっつーい……。」 縁側にぶっ倒れ、少女は呻き声を上げる。美少女……泉も、絶対死守していたクーラーボックスから手を離し、一時休戦だ。 「隙あり!」 少女は勢いよく起き上がり、クーラーボックスに手を伸ばし、それより勢いよく起き上がった泉の手によって防がれる。 「あー……。」 残念そうに声を上げる少女に、 泉はべーっと舌を出す。 「へへ、残念でした!まったく、油断も隙もあったもんじゃない。」 「あーもう……!暑いよぉー!」 半泣きになって叫べば。 「なんだねその情けない格好は!女の子がはしたない!」 そう言って現れたのは、少女の祖母である。 「あ、おばあちゃん。」 「情けないねぇ、ばあちゃんが小さい頃はこの中でも遊び回ったものさ!」 呆れた表情をにじませた少女の祖母は、そう言って手に持った盆を呆れたように置いた。
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