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あの子は次の日、川の下流で見つかった。
私が川で足を滑らせたときあの子は私の手を掴んで助けてくれた。
なのになんで、私はあの子を助けられなかったのだろう。
それから幾年も過ぎた。
夏の陽射しの中で黒く焼けた肌をさらけ出し無邪気に笑うあの子。
私の記憶の中のあの子はそれ以上成長するのを止めてしまった。
なのに私は年を取る。
夏が来る度、あの子と私の差は開いてしまう。
一年、二年、三年、十年。
大好きだったあの子。
あの子と私の距離をこれ以上遠ざけたくない。
でも夏はまた来てしまう。
あぁ、夏なんて来なければいいのに。
夏なんてなくなればいいのに。
そう、思わずにはいられない。
【終】
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