19人が本棚に入れています
本棚に追加
/106ページ
再度、話を聞いた限りでは赤黒いランプを電灯させた救急車が、河川敷にて浮浪者らしき者を運んでいたとの事だが…。
しかし、その浮浪者らしき者の胸には包丁が刺さっており、明らかに死んでいるようにしか見えなかったという。
正直、この内容だけでも厄介この上ない。
何故なら、これは片西が持ってきた都市伝説と類似する話。
否…。
これは恐らく、類似する話などではない。
恐らく、これは例の都市伝説そのものなのだろう。
だが、彼女の言う【大まか】の意味が俺には、やや引っ掛かっていた。
それは脳裏を巡る厄介な疑問ではあったが――。
しかし俺に、それを考えている暇はなかった。
何故なら、その直後、彼女はやや青白い顔色で【大まか】と言う言葉に対する答えを重々しく語り出したからである。
「実は、浮浪者を運び入れた救急隊員2人なのですがーー。」
その話は、そんな切り口から始まった。
そして、彼女は自分が経験した恐怖の体験を語り出す。
その体験とは、橋の上と言うやや遠方ではあったが彼女は、その救急隊員の一人の目を見てしまったという事実にあった。
だが、ただ目を見たと言うだけなら、大きな問題ではない筈。
ならば最大の問題は何だったのか?
それは、その直ぐ後に続く言葉で早々に明らかになった。
その内容とは救急隊員の瞳には黒目の部分が、存在していないという事。
つまり、彼らの瞳には白眼しか存在していなかったのである。
しかし、だからといって、それは全盲という事には繋がらなかった。
何故なら彼らは眼球を動かして、明らかに【見る】という行為をなしていたからである。
また、その救急隊員達は青白い肌をしており、まるで病人の様だったと言う。
俺はその話を聞き終え、考えたくもない可能性を想像する。
その可能性とは、死体を回収している不気味な救急隊員は、死人であると言う非現実的な可能性…。
(は……ははははは…。
何をバカな……全く俺らしくもない。
まさか死人が死体を集めて歩いてるってのか?
有り得ないだろよ、そんなの……!?)
そう……普通に考えて、それはリアリティーが無かった。
何処の世界に、死体を集める死者や幽霊が居ると言うのか?。
そんな話、おとぎ話でも聞いた事がない。
何よりゾンビなど、リアリティーが無さ過ぎる。
最初のコメントを投稿しよう!