神隠し。

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スマホを持つ左手が、ブルブルと微かに震えるが俺はそんな状況を無視し、画面を直視した。 俺が見る限り着信の形跡はない。 と、なると後はメールだが…。 即座に俺はメールを確認に移る。 そして、送信者・片西春香からの新着メールを発見した。 そのメールの件名は【手掛かり】と記載されている。 (手掛かりだって…!?) 俺は胸の高鳴りを抑えながら、メールを開封するべく片西からきたメールを選択した。 そこにあったのは絶望の闇に差す、希望と言う名の一筋の光。 メールの内容は、下総中山駅に向かう途中の道端で夏地のリストバンドを発見したとの事だった。 たかがリストバンドが落ちていた……ただそれだけの事に過ぎない。 普通に考えたら、そんな程度のモノでしかないが、しかし、これは俺達にとって大きな前進だった。 少なくとも夏地の形跡は分かったのだから。 そして、少なくとも分かった事が1つ。 夏地は、そのリストバンドが落ちていた場所で襲われ、連れ去られた可能性が高い。 つまり、そこには思いもかけない形跡が残されている可能性があるとゆう事である。 これは早く、確かめなければならない――。 俺はそんな思いに突き動かされながら、即座にスマホを手に取った。 ―――――― ―――― ―― 「あ……? やっときた、なっくん。 ここだよ、ここ!」 「悪い、遅くなったな?」 「全くだよ…善薙先輩も、もう来てるんだからね?」 「しょうがないだろ、電車が遅延してたんだし…。 それより、何か分かったか?」 「うん……取り立て、目新しい事はまだないかな…?」 片西が俺の問いに、やや俯きながら答える。 だが、その直後、善薙先輩が不意に口を開く。 「夏地くんが普段から身に付けているリストバンドが、ここで発見された事から考えて夏地くん達は恐らく、この場所で何者かに遭遇した。 そして、金山さんや夏地くんの血痕などが発見されていない事から考えて恐らく2人は、何者かに誘拐されたのだと思います。」 「善薙先輩も2人が、無事だと考えているのですね?」 「ええ、飽くまでも今までの状況からの推測になりますが、低温生物は今まで遺体のみを持ち運ぶ行為のみを行っておりました。 しかし、今回は明らかに異なります。」
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