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そして、その忌み嫌ってきた能力があるからこそ俺は、その能力を頼りに2人を助けようとしている。
それにしても善薙先輩の能力を知ったが故に、俺は今までの出来事について思わず納得した。
このサークルに入るまでに、俺に降りかかった様々なる災難も、救急車を狙撃する時に低温生物達に訪れた出来事も全ては、善薙先輩の能力によるモノだったならば辻褄が合う。
そして、あの低温カラス達が撤退したのは偶然などではあるまい。
恐らく十中八九、善薙先輩の仕業であろう。
善薙先輩に、関する様々な謎。
それが徐々に徐々にと解けて行く。
だが…今、気にしなければならないのは、そういった事ではない。
何故、今このタイミングで善薙先輩が自分が能力を保有している事を俺に明かしたかだ。
当然、隠し事をしていては本当の意味での信頼を得られない……そう思ったからなのかも知れない。
しかし理由は、それだけではない…そんな気がする。
そして、そんな予感は善薙先輩の次なる言葉によって、確信に変わった。
「所で夏橋くん、貴方の能力は具体的にどの様な形で危険を把握するのですか?」
「えっ……?
あ、えーと、色で危険が迫っているのか安全な状態なのかを、把握できます。」
「そうですか…。
で…その能力は、貴方自身以外の危険を感知できるモノなのですか?」
(――?
一体、何を言いたいんだ善薙先輩は……?)
俺は善薙先輩が何故、そんな事を問うのか理由が分からず、思わず眉をしかめる。
善薙先輩は俺を、救出に行かないように説得しようとしている筈だ。
だが今、善薙先輩が俺に聞いている事は、どう考えても俺を説得する事に繋がるとは到底思えない。
だからこそ、俺は思わず善薙先輩の言葉に答えず、逆に問い掛けた。
「善薙先輩、何故そんな事を聞くのですか?」
「分かりませんか、夏橋くん?」
「一体、何の事を言っているのですか?」
俺が、そう問い掛けると善薙先輩は一旦、瞬きをし再び口を開く。
「夏橋くん、分かっていないのですか?
貴方が救出に向かうと言えば片西さんも、必ず着いて行きます。
そして、片西さんが着いてきた場合、貴方の能力で彼女を守ってあげる事が出来るのですか?」
「それは……。」
その瞬間、俺は漸く理解した。
善薙先輩が、何を言わんとしているのかを――。
――――――
――――
――
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