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「そういえば、俺の自己紹介をしていなかったよな。俺の名前は、一乃瀬凍夜。こっちの世界では、トウヤ・イチノセだな」
「存じ上げております。100年前、危機に瀕していた人間族を救い、魔王や獣王たちと激戦を繰り広げた伝説の勇者様ですよね」
ふふふ、昨日から考えていた褒め言葉です。
お母様たちに言ったら怒られるかもしれませんが、私はこの契約を一方的なものだと考えています。そして、私は聖獣、主は人間、この間にある溝を埋める気もありません。
私なんかが言うのはあれですけど、やっぱり強そうには見えないんですよね。
「俺は勇者じゃない」
またまた考えに没頭していた私は、まるで急に頭から冷水をかけられ驚いた様に主の顔を見た。
そこには、私の想像していた感情は何も映っていなかった。
「メデルが言う伝説の勇者、神導の勇者の物語は100年も前に終わっている。今、ここにいるのは一乃瀬凍夜だ」
愚鈍な私でも直ぐに分かった。
ここにいるのは、人々の希望であった勇者ではなく、1人の人間、一乃瀬凍夜だと主は言っているのだ。
ああ、私は何て愚かなんだ!
「申し訳ありません!」
「謝る必要はないさ」
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