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ヴァーデン王国
門の前で入国の列に並んでいると、俺以外の3人が周りから視線が気になる様だ。
まだまだだな。
嘗ての俺なんて何処に行っても色々な視線で見られた。
好意的な物、好奇を込めた物、敵対的な物、値踏みする物、軽蔑する物、本当に色々な視線に晒されて来た。
だから、こんな物気にする程でもない。
それに、今回俺たちに向けられている視線の殆どが美少女のリツェアと愛らしいメデル、『人化』した美男子のヴィルヘルムに向けられている。
「あ、主、皆に見られてます」
「気にするな。どうせ何もして来ない」
「う~、分かりました」
「それと、この国では俺は雪と名乗る」
俺は3人にだけ聞こえる声で喋った。
偽名が雪とは、あまりにも安直な気もするが……偽名だから良いか。
「雪様ですね、畏まりました」
「心配し過ぎ、とも言えないわね」
「分かった」
勇者トウヤ・イチノセ。この名はこの世界で元々そこまで有名ではない。
冒険をする上で有名になり過ぎるのは寧ろ邪魔だと思い情報操作を国に頼んでいたのだ。だから、トウヤ・イチノセよりも『神導の勇者』や現在では『魔人』の方が有名なのだ。
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