第十二章

40/61
451人が本棚に入れています
本棚に追加
/436ページ
   気難しい藍牙をなだめながらアウド・ヤールとジュナが砦に戻ったのは、翌日の午後だった。 「姫様!」  焼け跡に臨時の竈を組んで、戦士もシトリア人も区別なく熱いスープを振るまっていたマレシアが、気付いて玉杓子を振り回す。 「ジュナ様!」「姫様!」 「ワカナ夫人、マレム先生!みんな、無事だった?ティアはどこ?」 「ティアは医療テントです。知識があるので、祖母と一緒に皆の手当を」  だが続く言葉を聞いて、ジュナは青ざめた。 「キオ」  ジュナは薬で眠っている、血の気のない少年の顔を覗き込み、その手を取った。  むきだしの痩せた胸に巻かれた、血のにじんだ包帯が痛々しい。 「倒れたモルト殿を庇って、マイダー兵の前に飛び出したのです」  レットが後ろからささやいた。 「ろくに剣もふるえない若造のくせに・・・」 「ジュナ様が皆を竜舎に集めて下さって幸いでした。  マイダー達はジュナ様を狙って、母屋に押し寄せたのです」 「シトリアの王女を探せと、口々に喚いて」  
/436ページ

最初のコメントを投稿しよう!